コラム

インプラントの寿命はどれくらいか?

 

 

患者からのインプラント相談を受けていて、よく聞かれるのが「インプラントはどれくらい持ちますか?」という質問です。皆さんは「年数にして自分の場合はどれくらい長持ちするのか?」を知りたいのだと思います。私はこの疑問に答えたくても、「未来の予想を当てる」のは難しく、返答に困ってしまします。

 

もちろん、患者の皆さんがこの質問をするお気持ちはわかります。「せっかく治療するのだから一生涯持って欲しい」と願う方は多いです。

 

厚生労働省も「国民は知りたがっている」と考えているのでしょう。国の予算を使って答えを探そうとしました。2014年という少し古い研究結果ですが、日本の歯科大学教授陣が「インプラントの寿命」について論文のデータを集めて分析し、集計し、結論を出しました。

 

歯科インプラント治療のQ&A

厚生労働省歯科インプラント治療のためのQ&A

 

その結果、インプラントの寿命の結果を厚生労働省はこのように結論付けました。

 

「いわゆる埋入したインプラントが何年間口腔内で残存・機能するかという問いには(いわゆる寿命)、現在の研究報告を見る限り適切に回答することは困難である。」

 

 

ワ~オ(笑)

 

出典は、厚生労働省委託事業「歯科保健医療情報収集等事業」歯科インプラントのためのQAという公文書で、調査した歯科医師も公表されています。この作業班に名を連ねる歯科医師達は立派な役職に就いている方たちばかりです。

 

作業班

 

班 長

広島大学大学院医歯薬保健学研究院

歯周病態学研究室教授 栗原英見

 

班 員

日本大学歯学部歯科補綴学第Ⅲ講座准教授 萩原芳幸

九州歯科大学口腔機能再建学講座

口腔再建リハビリテーション学分野教授 細川隆司

東京歯科大学口腔インプラント学講座教授 矢島安朝

秋田大学医学部病院歯科口腔外科教授 福田雅幸

日本大学松戸歯学部歯周治療学講座教授 小方賴昌

東京医科歯科大学大学院医歯学総合研究科

生体支持組織学講座歯周病学分野教授 和泉雄一

東京歯科大学臨床検査病理学講座准教授 松坂賢一

長崎大学大学院医歯薬学総合研究科

展開医療科学講座口腔インプラント学分野教授 澤瀬隆

日本歯科大学新潟生命歯学部

歯科補綴学第Ⅱ講座教授 渡邉文彦

広島大学大学院医歯薬保健学研究院

口腔外科学研究室准教授 武知正晃

(敬称省略) 

 

厚生省の作業班が出した結論は、なかなか歯切れの悪いものとなりましたが、次に「インプラントの成功率」についてのお話をさせて頂きます。

先ほど、「寿命と成功率は違う」とありましたね。そこで、成功率に関する統計を見てみましょう。日本の厚生労働省にはこのデータはありませんので、スウェーデン政府のデータを使います。この原稿を書いている時点で最も新しい研究結果からお話しします。

 

スウェーデンでは、インプラント治療は保険治療ですので、いつだれがインプラントをやったのかという記録を社会保険庁が持っています。そのデータを使って10年後の患者を呼び出してその後どうなったのかを調べた研究があります。世界で最も多い数の集計であり信頼できる研究という評価を受けているものです。

 

スウェーデンの研究結果として、10年後に残存していたのは95%のインプラントでした。10年成功率95%です。

 

ちなみに、自動車検査登録情報協会によると20183月末の乗用車の平均車齢は8.6年でした。自動車よりは長持ちですね。

 

さて、おおとも歯科の患者の場合はどうなのか?というとインプラント成功率は97.97%です。

20年以上経過したインプラントを含めた20196月時点の集計結果で、除去されたインプラントがたったの2.03%です。これはすごい数字です。

 

スウェーデンの全国平均は95%の成功率(10年後の集計)と比べて、おおとも歯科のインプラント成功率は97.97%(20196月累計2093本の集計結果)ですので、おおとも歯科は世界平均よりもいい数字が出ています。基本をしっかり守り、科学的根拠は大切だと考えている結果が出ていると思っています。

 

【豆知識】

歯科医院で質問する時に「インプラントの寿命はどれくらいですか?」と聞いたら真面目な歯科医は困りってしまうかも知れません。優しい先生は「回答は困難です。」という正解を口に出せないかも知れません。「インプラントの成功率はどれくらいですか?」と聞けば数字でかえって来るかも知れません。まあ、これは笑い話しとして気に留めて置いて下さい。